WAREHOUSE Lot1000(1001XX)福袋専用モデルの特徴と年代考察
こんにちは、タツです。
今回はウエアハウスの福袋専用モデルであるLot1000(1001XX)(以下専用モデルと呼びます)の特徴と、この専用モデルはどの時代のジーンズを参考にしているのかという年代考察をしていきたいと思います。
まずこの専用モデルは2015年の福袋に入っていた一本で、一般に市販されておらず当然公式サイトにも載っていません。
しかし調べてみると福袋には結構高い確率で入っていたようです。デニムの色も濃紺やかなり青みの強い紺などあるようです。またベルトループのみ違う生地を使っているものもあります。
それではいろいろと変わったジーンズであるLot1000(1001XX)福袋専用モデルを詳しく見ていきましょう。
目次
Lot1000(1001XX)福袋専用モデルはどの時代のジーンズを参考にしているのか?
僕の福袋に入っていた専用モデルは濃紺です。以前糊を落としたので現在はワンウォッシュの状態で保管してあります。
詳しい説明は後述しますが、ここから見てわかるポイントは、
紙パッチ
ベルトループのオフセット
です。この3つのポイントは専用モデルがどの時代のジーンズを参考にして作られているのかを調べる上でとても重要です。
まずこの3つのポイントから専用モデルの元となったジーンズを考えていきます。
クロッチ部分の逆U字ステッチ
フロントボタン下部のクロッチ部分に縦長の長方形のステッチが施されているのがわかります。この部分の上部には1930年代までは股リベットが取り付けられていましたが、股リベットが廃止された1940年頃から1966年頃までは上の画像のような逆U字状のステッチのみでした。
そして1966年または67年の501XXから501ビッグEに移行する時期にクロッチ部分の逆U字ステッチ上部にバータック(カンヌキ)が施されることになります。
出典:WAREHOUSE & CO. / Lot 1101
上の画像は最初期のビッグEを参考にしているウエアハウスのLot1101です。クロッチ部分の逆U字ステッチ上部にバータック(カンヌキ)が施されているのがわかります。クロッチ部分の逆U字ステッチ上部とバータック(カンヌキ)がズレて施されている通称「ズレカン」と呼ばれるビッグE最初期の特徴です。
専用モデルにはバータック(カンヌキ)が施されていないので少なくともビッグE以前、つまり1966年または67年以前のXXを参考にしているということがわかります。(ダブルネームは後述)
紙パッチ
1950年代中頃にそれまで革パッチだったのが紙パッチに変更されます。具体的に言うと501XX(1955年モデル)です。
専用モデルも紙パッチです。
ここで気になるのが紙パッチのLot1000の上に小さく1001XXと書かれています。これはリーバイスで言えば501の上に小さく501XXと表記される所謂「ダブルネーム」と言われるもので1966年または67年に 501XXからビッグEに移行する最初期に見られる特徴です。
前述の逆U字ステッチのところで1966年または67年以前のXXを参考にしていると述べましたが、ビッグE最初期にはクロッチ部分のバータック処理が施されていないビッグE(ダブルネーム)も存在しているので、現時点では専用モデルの参考にしているジーンズの年代は特定できていません。
しかし紙パッチであることからこの時点では1955年以降のモデルだと思われます。
ベルトループのオフセット
この専用モデルはベルトループがオフセットされています。オフセットとはセンターベルトループが左に少しズレて取り付けられているものを「オフセットベルトループ」と呼びます。
この仕様は1950年代中頃から1963年頃までのXXで見られる特徴です。
具体的に見ると、
ギャラ入り紙パッチ
ギャラなし紙パッチ最初期
までがオフセットベルトループを備えるモデルです。
そうすると1966年または67年頃に登場した所謂「ダブルネーム」のベルトループはオフセットではなくセンターセットされていなければならないので年代がズレることになります。
しかしそこはヴィンテージに対して百戦錬磨のウエアハウスですので何か思惑があるのかもしれません。なのでもう少し細かな部分も見ていきましょう。
隠しリベット
トップボタンの1つ下のボタンの右側にリベットが打ち込んであるのがわかります。
バックポケットの補強のために取り付けられたリベットで、ジーンズの内側からは簡単に見つけられますが、表からはリベットを隠すようにバックポケットの生地が被せられているので「隠しリベット」と呼ばれます。
隠しリベットは1937年から1966年までの比較的長い間取り付けられていました。基本ヴィンテージ501の年代を判定する場合に隠しリベットが取り付けられていれば、XXと判定するようです。
なのでこの専用モデルも隠しリベットが取り付けられているので1966年以前のXXを参考にしているのではないか?と言いたいところですが、1966年または67年のビッグE最初期にも隠しリベットが取り付けられているものもありますので、確定はできません。
ちなみに赤タブは両面タブで®️ならぬ○の中にWの文字が入ってました。
フロントポケット内側のリベットの素材
この部分は紙パッチの破損した「ギャラ入り紙パッチ」と「ギャラなし紙パッチ」を見分けるときに判定する部分です。画像ではわかる通り銅色のリベットが取り付けられています。
リベットが銅色であれば「ギャラ入り紙パッチ」、アルミであれば「ギャラなし紙パッチ」と判定するようです。少なくとも銅色であれば「ギャラ入り」だろうが「ギャラなし」であろうがXXと判定して間違いないです。
このフロントポケット裏側のリベットの素材が銅色なのは1963年までで、それ以降、つまり現在まではアルミが使用されています。
この専用モデルは銅色、つまりXXを参考にしている事がわかります。最初期ビッグEの時点ではこの部分はアルミに変わっていました。なのでこの専用モデルのディテールはダブルネーム以外はXXを参考にしています。
Lot1000(1001XX)福袋専用モデルの特徴と年代考察の整理
専用モデルの主なディテールをまとめると、
パッチの素材は紙パッチでダブルネームである
ベルトループはオフセットされている
隠しリベットが取り付けられている
フロントポケット裏側のリベットの素材が銅色である
という感じになります。
上記でも述べたようにダブルネーム以外の特徴はすべてXXの特徴と合致します。そしてXXの中でも重要な特徴は紙パッチとベルトループのオフセット、そしてフロントポケット裏側の素材が銅色であることからこの専用モデルの主なディテールの参考になったのは 501XX(1955年モデル)だと思われます。所謂「ギャラあり紙パッチ」と呼ばれるモデルです。
そしてもう一つ考えられるのは、1950年代前半のXXである「最終革パッチモデル」です。専用モデルのダブルネーム紙パッチを革パッチに取り替えるとディテールの特徴は「最終革パッチモデル」にもなります。
つまり「最終革パッチモデル」にビッグE最初期のダブルネーム紙パッチを取り付けた、という考え方もできます。
整理すると、
または
専用モデルは「最終革パッチ」を参考にして作られ、革パッチをビッグE最初期のダブルネーム紙パッチに取り替えた
という結論になります。
Lot1000(1001XX)福袋専用モデルの特徴と年代考察のまとめ
この専用モデルはパッと見るだけだと1960年代後半のビッグE最初期であるダブルネームを参考にして作られたものだと思ってしまいますが、しかし実際はXXを参考にして作られています。
何れにせよウエアハウスの福袋専用モデルは遊び心満載ですごく面白いジーンズだと思います。コアなウエアハウスファンがこのような専用モデルを狙って福袋を購入するのがわかります。
最後に専用モデルの裾部分を。
まさかの耳はピンク色です。
最後まで読んで頂きありがとうございました!