ウエアハウスジーンズで見る、ヴィンテージレプリカの年代別の特徴と見分け方
こんにちは、タツです。
ヴィンテージのジーンズ(XX、ビッグE、66など)というのは、その時代によっていろんな特徴があります。
ウエアハウスは、そんなヴィンテージのジーンズをほぼ忠実に再現しており、さらに1920年代から1970年代の定番ヴィンテージから、マニアックなヴィンテージまで幅広く展開していますので、今回はオリジナルではなく、ウエアハウスのジーンズで各年代ごとの特徴などを見ていきたいと思います。
しかし年代ごとの解説では、ウエアハウスジーンズだけではなくオリジナルについての説明も併せてしていきたいと思います。
目次
1920年代の特徴
ウエアハウスで1920年代の特徴を持つジーンズは、Lot DD-1004XX(1922)です。
引用元:WAREHOUSE & CO. / DD-1004XX(1922MODEL)
1920年代の始めまではサスペンダーボタンのみで、まだベルトループは付けられていませんでしたが、1922年から新たにベルトループが備わることになりました。しかし依然としてサスペンダーボタンは付けられたままです。
そして補強のために股リベットが打ち込まれています。まさに作業服という感じです。
引用元:WAREHOUSE & CO. / DD-1004XX(1922MODEL)
そしてバックスタイルの特徴ですが、シンチバックが大きな特徴です。
ベルトループが付く前まではシンチバックのみでウエストの調整をしていましたが、ベルトループが付いたことによりベルトでもシンチでもウエストの調整ができるようになりました。
そしてもう1つの大きな特徴は、バックポケット上部左右のリベットがむき出しになっていることです。
XX好きなら一度は耳にしたことのある隠しリベットですが、1920年代当時はまだ隠しリベットは存在していないので、バックポケットにはむき出しのリベットが取り付けられていました。
ちなみにこの当時はジーンズではなく「ウエストオーバーオール」と呼ばれていました。
シルエットは1920年代当時は股上が深くズドンと太いシルエットですが、ウエアハウスが所有するヴィンテージは股上が浅く、極端な太さを感じさせない作りだったため、このDD-1004XX(1922)はその仕様を再現しています。
1920年代の特徴を整理すると、
サスペンダーボタンが付いている
隠しリベットではなく、リベットがむき出しになっている
股リベットが付いている
赤タブは付いていない
というのが1920年代の主な特徴になります。
1930年代の特徴
ウエアハウスのジーンズで1930年代の特徴を持つジーンズは、Lot DD-1004(1937)です。
ちなみに、以前ウエアハウスから販売されていた700シリーズも1930年代の特徴を持つジーンズです。
引用元: WAREHOUSE & CO. / DD-1004(1937 MODEL)
1937年頃からサスペンダーボタンは廃止されました。LVC(リーバイスヴィンテージクロージング)のXX(1933)モデルではサスペンダーボタンが付いているので、1930年代前半と後半でサスペンダーボタンの有無の違いがあります。
股リベットは付けられたままです。
引用元: WAREHOUSE & CO. / DD-1004(1937 MODEL)
シンチバックも付けられたままです。しかしこのDD-1004XX(1937)モデルから新たに加わった箇所が存在します。
まず1つ目は隠しリベットです。
Lot DD-1004XX(1922)同様に1937年以前のモデルにはバックポケット上部の左右にリベットがむき出しのまま付けられていました。
しかしそのむき出しのリベットが家具や鞍を傷つけるという顧客の不満に応えるため、バックポケットのむき出しリベットが隠れるように生地を縫い付けたのが隠しリベットです。
現在ではこの隠しリベットはXXを代表するディテールの1つになっています。
そしてもう1つは、赤タブです。
正しくは1936年から赤タブが付けられることになります。当時はタブの表にしか文字が表示されていない片面タブというものでした。
このLot DD-1004(1937)もサスペンダーボタンの廃止、シンチバック、隠しリベット、片面タブなど代表的なディテールを忠実に再現しています。
1930年代後半の主な特徴を整理すると、
むき出しリベットから、隠しリベットに変更
赤タブが新たに取り付けられる
シンチバックは変わらず付けられている
というのが1930年代後半の主な特徴になります。
1940年代の特徴
1940年代になるとジーンズも大きく変化していくことになります。ウエアハウスで1940年代の特徴を持つジーンズは3本あります。
まず1本目、Lot DD-1003SXX(1943)です。
引用元:WAREHOUSE & CO. / Lot DD-1003SXX LIMITED(1943MODEL)
1940年代のモデルは大きく分けると大戦モデルと大戦後モデルに分けることができます。1942年頃〜1945年頃に作られたXXを大戦モデルと呼びます。
このLot DD-1003SXX(1943)は1942年の日本軍の快進撃から1943年の米軍が反撃に転じる頃に作られたXXをモデルにしています。
当時のアメリカの戦局は非常に厳しく、物資統制が敷かれていました。リーバイスもその余波を受け、ジーンズを作る際の材料に制限がかけられました。
ロットナンバーのSXXのSはsimplified=簡素化という意味を持ちます。オリジナルでもSXXと表記されていて、簡素化されたXXという意味です。
簡素化の名の通り、リベット類の省略がされました。まず股リベットの廃止です。この股リベットが廃止され、クロッチ部分の長方形の逆U字状のステッチは1966年のXX廃止まで受け継がれることになり、XXを象徴するディテールの1つになります。
そしてウォッチポケット(コインポケット)上部左右のリベットの省略です。ウォッチポケット上部のリベットは戦後復活することになります。
引用元:WAREHOUSE & CO. / Lot DD-1003SXX LIMITED(1943MODEL)
この月桂樹のトップボタンは大戦モデルの象徴とも言える部分です。元々このトップボタンを含め、フライボタンは鉄製のオリジナルのロゴが入ったボタンが使用されていました。
しかし軍用衣料と同じ素材を使うことで生産効率を上げるために、このような月桂樹のドーナツボタンが使用されています。
引用元:WAREHOUSE & CO. / Lot DD-1003SXX LIMITED(1943MODEL)
スレーキの素材も上のような理由で、このようなヘリンボーン生地が使用されています。ヘリンボーン生地の他、ネル生地なども使用されていたりします。
引用元:WAREHOUSE & CO. / Lot DD-1003SXX LIMITED(1943MODEL)
シンチバックも廃止されることになりベルトループのみになりました。そして大きく湾曲した左右非対称のバックポケットです。
当時ベテラン縫製職人も戦場に駆り出されることになり、縫製工場は素人同然の職人が縫製を担当していました。なのでこの雑な縫製も大戦モデルを代表するディテールの1つと言えます。
そしてバックポケットのペンキステッチです。
オリジナルの象徴とも言えるバックポケットのアーキュエイトステッチも制限されました。そこで苦肉の策としてペンキでアーキュエイトステッチを施したとされるのが、このペンキステッチです。
このLot DD-1003SXXは「S」の名の通りガチガチの大戦モデルを忠実に再現しています。
実はウエアハウスにはもう1本大戦モデルがあります。Lot DD-1003XX(1945)です。
引用元: WAREHOUSE & CO. / DUCK DIGGER Lot DD-1003XX(1945MODEL)
このLot DD-1003XX(1945)は大戦末期〜終戦直後の物資統制の制限が解除されつつ合った時代の珍しいXXを再現したモデルになっています。
引用元:WAREHOUSE & CO. / DUCK DIGGER Lot DD-1003XX(1945MODEL)
Lot DD-1003XX(1945)は大戦モデルのディテールを残しながらも省略されていたリベットや、月桂樹のドーナツボタンからオリジナルのボタンに戻されるなど、大戦勝利に沸く当時のアメリカの状況がよく伝わるディテールをしています。
引用元:WAREHOUSE & CO. / DUCK DIGGER Lot DD-1003XX(1945MODEL)
スレーキは大戦モデルの名残(なごり)であるヘリンボーンのスレーキになっていますが、しかしフライボタンはすべてオリジナルのボタンになっています。
ここで大戦モデルの特徴の整理をすると、
シンチバックの廃止
ウォッチポケットのリベットなどの省略
フライボタンがオリジナルの鉄製ボタンから月桂樹を象ったドーナツボタンに変更
バックポケットのステッチをペンキステッチに変更
スレーキの素材がヘリンボーン生地やネル生地に変更
左右非対称のバックポケットなど縫製が雑
という感じで大戦中の簡素化されたその作りがよくわかります。
ここから簡素化されたディテールと復活したディテールを併せ持つLot DD-1003XX(1945)を経て、正式に戦後モデルに受け継がれます。
Lot DD-1001XX(1947)です。
引用元:WAREHOUSE & CO. / DUCK DIGGER Lot DD-1001XX(1947MODEL)
オリジナルでは革パッチXXや1947モデルとも言われます。
一般的にXXと聞いてイメージするのは戦後のXXですね。もっと細かく言えばこの革パッチXXを指します。
引用元:WAREHOUSE & CO. / DUCK DIGGER Lot DD-1001XX(1947MODEL)
隠しリベット、トップボタン部分のV字ステッチ、クロッチ部分の逆U字状のステッチ、ウォッチポケットのリベットの復活、革パッチ、赤タブ、2本針式の機械によるバックポケットのダイヤモンド型ステッチなど、レプリカジーンズのXXモデルと言えばこの1947モデルをイメージして作られているのを多く見ます。
特徴的なディテールを持つ大戦モデルと、シンプルながらもXXを象徴するディテールをすべて持つ1947モデルはレプリカジーンズの中でも非常に人気の高いモデルでもあります。
戦後モデル(1947)の特徴を整理すると、
フライボタンが月桂樹のドーナツボタンからオリジナルのボタンに復活
バックポケットのステッチがペンキステッチから糸によるステッチに復活
バックポケットのステッチが2本針の機械に変更されたことにより特徴的なダイヤモンド型ステッチになる
革パッチ
という感じです。
そして1950年代に入るとXXのディテールもさらにまた変化していくことになります。
1950年代の特徴
現在ウエアハウスで1950年代の特徴を持つジーンズは、Lot 1001、Lot 1001XX、Lot DD-1001(1951)があります。
ここではLot DD-1001(1951)でその特徴を見ていきたいと思います。
引用元: WAREHOUSE & CO. / DD-1001(1951 MODEL)
1950年代になるとそれまでの労働者の作業着から若者のファッションへと進化していくことになります。呼び方もオーバーオールからジーンズへと変更になります。
フロントは1947モデルとほぼ同じディテールになっています。
引用元: WAREHOUSE & CO. / DD-1001(1951 MODEL)
バックを見ると変更されている部分がよくわかります。ベルトループがセンターセットからオフセットされています。
オフセットとはセンターのベルトループが真ん中から左にズレて付けられているものをオフセットベルトループと言います。
この仕様は1951年頃〜1963年頃までオフセットベルトループが付けられることになります。
オフセットベルトループは1953年頃、または1954年頃〜1963年頃、または1964年頃までというのが有力です。
ざっくり言うと1950年代半ばまでベルトループはセンターセットされていたということになります。
そしてこの1951年モデルというのは、革パッチの付く最終型となります。1951年から数年後の1955年頃に革パッチから紙パッチに変更されることになります。
なのでこの1950年代前半の革パッチでベルトループがオフセットされているモデルを、最終革パッチモデルと呼びます。
また、1951年頃から赤タブはそれまでの片面タブから、表と裏の両面に文字が表示されている両面タブに変更されます。
1950年代前半の特徴を整理すると、
赤タブが片面タブから両面タブに変更される
革パッチの付く最終型
という感じになります。
残念ながら現在ウエアハウスでは1951年モデル以降のXXをイメージしたジーンズは販売されていないので、その後のXXの流れを書きますと、1955年頃に革パッチから紙パッチに変更されます。このモデルは、1955年モデル、または紙パッチXXと呼びます。
そして1963年頃に紙パッチから「Every Garment Guaranteed」という文字がなくなります。1955年の紙パッチXXをギャラあり紙パッチ、1963年の紙パッチXXをギャラなし紙パッチと言います。
紙パッチXXの詳しい解説はこちら↓
その後XXは1966年頃に廃止され大幅なモデルチェンジをすることになります。XXの後継モデルはビッグEです。
ビッグEの詳しい解説はこちら↓
年代ごとのXXモデルを見分けるポイント
どの年代のXXかを見分けるポイントとして簡単なのは1947年モデルを基本として見分けるのが簡単です。
引用元:WAREHOUSE & CO. / DUCK DIGGER Lot DD-1001XX(1947MODEL)
1947モデルはXXの基本とも言えるディテールをすべて持っています。
隠しリベット、クロッチ部分の長方形ステッチ、片面タブ、ベルトループのセンターセット、革パッチなどです。
まず1937年〜1966年までのXXにはすべて隠しリベットが付いているので、隠しリベットが付いていればXXをモデルにしていると判定できます。
そして、例えば1947年モデルのベルトループがオフセットされていて、赤タブが両面タブで革パッチなら1950年代前半の最終革パッチXXと推測できますし、革パッチが紙パッチなら1950年代中頃の紙パッチXXと推測できます。
またシンチバックが付いていなくても、股リベットが打ち込まれていれば大戦モデル以前、または1930年代のXXをモデルにしていると推測できます。
1920年代のXXモデルと大戦モデルは独特のディテールをしているので見分けるのは簡単だと思います。
実際オリジナルのヴィンテージXXは破損しているものが多く、また前期や後期などがあるため見分けるためにはリベットの刻印やフライボタンの文字の大きさ、ステッチの糸の色などで判定するときもあるので大変難しいですが、レプリカジーンズであればその年代ごとのディテールのポイントをわかっていれば、どのXXをモデルにしているのかわかります。
XXモデルの各パーツの使用された年代のまとめ
- ベルトループ 1922年頃〜
- ベルトループのオフセット 1953年頃〜1963年頃まで、または1954年頃〜1964年頃まで
- サスペンダーボタン 1937年頃まで
- 隠しリベット 1937年頃〜1966年頃まで
- 赤タブ 1936年頃〜
- 片面タブ 1936年頃〜1951年頃まで
- 両面タブ 1951年頃〜
- シンチバック 1940年代前半頃まで
- 月桂樹のドーナツボタン 1942年頃〜1945年頃まで
- ペンキステッチ 1942年頃〜1945年頃まで
- 革パッチ 1955年頃まで
- 紙パッチ 1955年頃〜
- ギャラあり紙パッチ 1955年頃〜1963年頃まで
- ギャラなし紙パッチ1963年頃〜
- クロッチバータック 1966年頃〜
- フロントボタン裏のリベットの素材が銅色 1963年頃まで
- フロントボタン裏のリベットの素材がアルミ 1963年頃〜
- パッチにXX表記 1966年頃まで(ダブルネーム除く)
XXモデルの年代を調べるときなどにどうぞ。
ウエアハウスジーンズで見る、ヴィンテージレプリカの年代別の特徴と見分け方のまとめ
ウエアハウスなどヴィンテージレプリカジーンズやLVCなどの復刻モデル、さらにオリジナルのヴィンテージXXの年代がわかればもっと楽しくジーンズを穿き込むことができると思います。
もっというとその当時の時代背景などがわかれば、さらに面白いです。
今回は1920年代のXXモデルから1950年代前半の最終革パッチモデルまでの特徴と各年代の見分け方を書いてきましたが、次回はXXの後継モデルであるビッグE(ダブルネーム、タイプもの)や66モデル(前期、後期)、また501以外のモデルの特徴や年代ごとの見分け方なども解説していきたいと思います。
まだまだ自分も勉強中ですが、ヴィンテージジーンズやレプリカジーンズの解説をもっとわかりやすく書いていきたいと思います。
長文を最後まで読んで下さってありがとうございました!